アニメ 脚本家(3話)の神山健治さん |
今回、初めてテレビシリーズの脚本に本格的に参加させていただきました神山と申します。 元来、自分の本業はアニメーションの演出家なのですが、ちょっとした事情から脚本のみの参加となっております。 今年の春先、やはりSONYさんの某ゲームのムービー部分を演出させていただいた際、知り合いのラインプ ロデューサーから「今度うちでワイルド・アームズのテレビシリーズが動くんだけど参加してみない」と声を かけられたのがそもそものきっかけでした。 丁度その頃、某ゲームのムービーパートの演出作業が佳境に入っていたことと、次の仕事がいつからスタートするのかが分からなかったため、各話演出としては参加できそうにない状態でした。 そこで「コンテ作業は普段から経験している訳だから、脚本として参加して、シリーズを通しての構成会議を体験してみるのも良いんじゃないか」と云われ、ありがたく参加させてもらうことになったのです。 しかし、実際作業を始めてみるとこれがなかなか大変で、一話完結話で、しかも毎話必ず”変人”のゲストが登場し、更に6人のメインキャラクターそれぞれが自分を主張しつつ大活躍する・・・。 「そんなに詰め込めるのか・・・!?」と脚本会議の席で手のひらに脂汗をにじませながら、スタジオのパソコンの前に戻っては挌闘すると云う日々を7月頃まで送っていました。 ですがあれから6ヶ月。早い物で自分の作業は最終回一話前まで進んできてしまいました。 その間、不慣れな僕とワープロ上で一緒に挌闘してくれたシャイアン、キール、アイザック、ミラベル、ロレッタ、ジルーシャ達は既に自らの魂を得て、どんどん一人歩きしいるように思えます。 これはとっても不思議な体験でした・・・。 普段、演出作業だけをやっていると、キャラクターデザインは決定していて、声優さんのキャスティングもFIXし、もはや人格の芽生え始めた登場人物達を、カメラの前でどのように演技させるかと言ったことを一番に考えて作業していくのですが、脚本からの作業ではまだゼロの段階にあるキャラクターを、まず自分が創造しなければならないのです。 それは僕にとっては恥ずかしくも刺激的な体験でした。 そしてそれが以外に病み付きになり、癖になっていきそうな気がするのです。 だって考えて見て下さいよ。自分が考えたキャラクターがデザイナーによってその姿を描き出され、そのキャラ達が芝居をした上に、本当は僕が考えた台詞を声優さん達が一生懸命キャラになりきって喋っているのですから・・・。 こんな幸せな体験が他に有ろうか?僕はそう思った訳です。 ですから、今ではそんな体験をさせてくれたワイルドアームズに、心の底から感謝しています。 出来ればこの気分をずっと続けていたいななんて思うのですが、脚本作業は他のスタッフよりずいぶん先に終了する物・・・。 残念です。 ですが観客の皆さんは、これからますますはずみ車が回って行く(はずの)ワイルドアームズTVを心ゆくまで堪能してください。 それが今の僕の喜びなのですから・・・。 |
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