「デビルマン」を最初に知ったのはいつですか?
竹下  やはりTVアニメ版からですね。オリジナルのコミックはかなり後になってからですね。5、6年前に、友達に勧められて。読んだとき「これまで読んできた漫画家さんたちはここから影響を受けたんだ!」と納得しました。
今回が初監督作品なんですよね?
竹下  わたなべひろしさんが監督したビデオの「夢で逢えたら」で好きにやっていいよということで、コンテと演出はやらせてもらったことはあったのですが、監督は初めてです。ターゲットが自分の年齢層に近いということで、自分の感性で作れるし、演出も際どい所で勝負できる。TVとは違い、お客さんに与える情報も「分かりやすい」というより「いろいろ考えてもらう」方法も取れると思います。
「デビルマン」はビッグ・タイトルですが?
竹下  もちろん、それは感じています。ただ、「デビルマン」だからといって、他の作品の時よりプレッシャーを多く感じるかというと、特にそれはないですね。一生懸命やるのはどの作品の時も、当然の事だとおもってますから…… もちろん、お金をもらって「人に見せる物を作る」というプレッシャーはいつものように感じてますけど。
「牧村家襲撃」以降の場面は初映像化になりますが。
竹下  僕は「デビルマン」のベースは不動明と牧村美樹と飛鳥了の三角関係だと思っているんです。このビデオはその三人の話だと考えています。だから「デビルマン」の世界全体を考えた時、その関係が一番色濃くでる場所をやれるなというところはあります。個人的には、それをやらないと意味がないかなとも思います。言い過ぎかもしれませんが。また、「デビルマン」の最初の方だけ観ていても全く思いつかないことなのですが、「人間は悪」で「デーモンたちが善」という見方もあると思うんです。今回は「ネオ・デビルマン」ビデオ版という観点もあるので、そういう要素にも触れられるかも。話は戻りますが、三角関係という点で、美樹と了はそれぞれ明のことを思って、でも明は思っていた美樹を殺される。明は了の手の中(仕組み)で生かされている…… という虚しさ。また了も仕組んでいながら、明から思ってもらえない虚しさある。そういう部分も表現できればいいなと。AMONももちろん物語の上で重要な意味をもってるんですが、大きくみると彼もサタン(了)の意志の中で動いているわけですよね。
愛と憎しみがドラマを転がしていく感じですか?
竹下  そうですね。なんで、明と美樹との恋愛的要素は是非いれたいですね。美樹は死んでも、回想シーンとか出てきますし。それに明に残された美樹の思いが、話のポイントになってきます。
恋愛だけではなくもちろん暴力的なシーンもありますよね?
竹下  ええ。アクションシーンは面白いと思いますよ。実は、アクションシーンをやりたいという理由から「烈火の炎」の演出をやっていたこともあるんですけど、TVシリーズですから限界があって、今回はその規制が緩いので。でも、いくらもの凄いアクションの連続でも、そればかりになると飽きやすいですから、そう考えるとメリハリちゃんつけてやります。
原作に見られるスプラッタ的なシーンの扱いはどうなるのですか?
竹下  ビデオが一番自由度がきくメディアですからねぇ。個人的には18禁指定になてもいいかなと。(笑)海外に売ることを考えれば、激しい方がいいだろうけど、最近の日本だと残酷な表現についての自粛がありますし…… そんな部分もなければ「デビルマン」とは言えないし、僕がやる意味もないから…… まぁ、多分みんなが創造している以上に…… って感じになるかな。ハードってことですけど。発売がソニーさんなんでどうなるか分からないけど。(笑)
現在はコミック、イラストを含めて「デビルマン」のアナザストーリー的な作品 が多く発表されていますね。
竹下  そうですね。「デビルマン」ファンの人たちは、各々いろんなことを考えているんだと思いますね。だからという訳ではないのですが、このOVAはOVAで「こういうのもあるかな」「こういう形もありかな」と思って見て欲しいなと思っています。「デビルマン」というのは、僕ひとりが考えるよりも、もっと大きな世界、思想なのかもしれませんが、それを各々が独自に解釈していて、その表現方法として、漫画家さんとかイラストレーターとかが、いろいろなメディアで発表しているんだと思うんです。きっと今回のOVAの位置付けも、そのひとつだということですよね。今はそう考えています。そもそも今回は企画として、原作で描かれていなかった部分を埋める、そしてアモンを登場させることで、新しい展開を見せるということですから。
最後にメッセージをお願いします。
竹下  最終的には自分が面白いと思ったことをするしかないと思っていますが……みなさんにも喜んでもらえるんじゃないのかなと思っています。観る価値は結構あると思いますよ。(笑)頑張りますので是非観てください。

監督・絵コンテ・演出
竹下健一(たけしたけんいち)。三重県出身。
「美少女戦士セーラームーン」シリーズの制作進行・演出助手を経て、「逮捕しちゃうぞ」(TV)で演出デビュー。その後、「みどりのマキバオー」「烈火の炎」「南海奇星(ネオランガ)」OVA「夢で逢えたら」などに携わる。

好きな映画 「スーパーマン」「戦国自衛隊」「あしたのジョー」「銀河鉄道999」「プラトーン」「フルメタル・ジャケット」「駅」「ルパン三世 カリオストロの城」etc

好きな漫画 「月下の棋士」「スラムダンク」「柔道部物語」etc

趣味 草サッカー