十年という時は如何様にも人を変えていく。
大伴頼子は常世へと旅立ち、経基は正式に源姓を拝命し、清和源氏の祖となった。藤原実頼は弟・師輔に取って代わられ、晴明はその師輔の門を潜っていた。
政の中枢を本気で目指した晴明に政敵と呼ぶほどの者はなく、程なく藤原師輔は他に比する者無き権力を掌中に収めた。
 「晴明殿、この十年…良くもここまで駆けたものと感心する」
経基は相変わらずの距離の取り方で晴明に接していた。晴明にとってはそれが不満であると同時に、救いだった。
 「まだまだ駆けるつもりだがね。都の治安維持のために成さねばならぬ事はまだまだ山積している。俺自身、生きているうちに全て終わらせることが出来るかどうか…」
 「何、たとえ我らの代で達成できずとも、我らの子なり孫なりが我らの意志を継いでくれよう」
 「…そうだな……」
内裏の中を並び歩く経基と晴明はまだ見ぬ未来の平安を夢見た。
他人を見下すことしかできなかった神童と、己の存在意義を見つけられなかった皇子は、今や同じ目的のために生きている。
経基が晴明の許を去り、その子孫である頼光が晴明邸を訊ねる事は歴史の必然でもあった。
雷公は言霊を使い頼子にその魂を宿らせた。晴明は経基の孫に敢えて雷公の魂を呼び寄せる名を与えたが、悪鬼の魂は現れることはなかった。
そして長徳元年。
雷公は再び都に戻ってくる。
帝と藤原と安倍晴明に復讐するために……。

end

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