シリーズ構成に関する覚え書き
シリーズ構成・脚本/赤星政尚

●9月7日
 集英社で、監督、藤本PD、長谷川社長、飯嶋PD、岡田さん、篠原さん、菊池さんを交えての顔合せ。当日提出したシリーズ構成第二稿(神代登場ヴァージョン)で、ほぼオッケーとなる。
 この時点で、五味丸、ヒサジン、バンチョー、ミチオといった、原作マンガの名無しキャラも勝手に命名(岡田さんに、中平先生に名前を確認して欲しい、と言ったら、確か“ないです”って即答された記憶が)。また、実は尸会各人に妙にコマかい設定があったりして、どうにも全10話の容量を掴み切れて様子がワカって、我ながら涙を誘う。千恵子先生が登場するのも、このヴァージョンから。
 ここでの概略は、

#1 流刑体<堕輪>VS随行体
#2 定光VS流刑体<堕輪>、定光VS流刑体<堕輪ver.2>
#3 転校生・神代やよい、バイク型流刑体を手に入れる定光
#4 コメディ編(H系?)
#5 ホラー編
#6 ゾンビ流刑体軍団VS流刑体軍団、巨大オブジェ流刑体
#7 巨大オブジェ流刑体による地球破壊阻止
#8 警察対尸会、定光とヴァルチャーの共闘
#9 定光VS明信


 とある。別に、この時点では全9話だったワケではない。にも関わらず、全9話でアレコレ考えてるあたりに(以下、自主規制)……ちゅーか、既にオン・エアを観た人にはバレバレですが。
 最初の流刑体が剥斬から堕輪(ダリン)に変わったのは、前の打ち合わせで監督から“歯車を武器にする流刑体”みたいなオーダーがあったからで、円盤獣ドルドル(原作版『グレンダイザー』に登場)みたいな、ヒザから下が歯車、的な流刑体を想定。これを受けての篠原版駄輪のラフも存在する。いや、見るからにフィギュア化を想定したデザインで、イイのよ、コレが。
 あと、ゾンビ流刑体軍団とか、巨大オブジェ流刑体とか、なんとも悩ましい記述がありますが、まぁ読み流してくださいマセ。
 で、この時点での神代の設定を、以下に引用しておく。

~ヴァルチャー・神代やよいの設定と、定光との関係~

◆流刑体が地球に衝突するのは「単なる不幸」(理由の説明は不要)。
◆随行体とヴァルチャーは「宇宙の警察機構」的な同じ組織に所属(詳細の説明は不要)。ヴァルチャーは随行体より遥かに上位の存在で、随行体には一切の命令権は無い。
 が、一方でヴァルチャー召還の判断は随行体に任せられている。但し「惑星そのものを滅ぼす危険を孕んだ」ヴァルチャーの召還は、随行体にとっての最終手段。つまり「その惑星ごと滅さなければ更に危機的状況が起こる」と随行体が判断した時にのみ、エマージェンシー・コールは送られる。
◆が、ヴァルチャー・神代やよいは地球へ向かう途中、天文学的確立の事故(ティプラーの双方向タイムマシン理論を転用)により、現在(随行体地球到達)より10年前の地球に到達してしまう。
◆この時、神代やよいと定光は、10年前に一度会っている。
 田舎のあぜ道で暴漢に絡まれる神代(いまと同じ顔)を守る、木刀を持った定光(当時7歳?)。もちろん神代自身はいつでも暴漢を殺せるわけで、ただその状況を面白がっていただけ。
 「ありがとう、定光くん」
 神代は定光の頬にキスして去る。以来、神代は定光にとって憧れのお姉さんに。
◆そして、現在。随行体(ポンコツ)がエマージェンシー・コールを送ったのは、依弩によって定光が殺されたためだった。つまり、クライマックスの戦いで定光が依弩を倒すとエマージェンシー・コールは発せられないことになり、ここにタイム・パラドックスが生じる。つまり、定光が勝つと、ヴァルチャーは地球にいないのだ!
 この設定で、ラストの寂寥感を煽れれば、と考えます。

 ここではまだ、純粋に「搭乗員=神代やよい」と考えてた。たぶん、この日の打ち合わせで幼なじみに変更するような宿題をもらって、第3稿の作業に入る。



●9月9日
 宅急便の日付けを見ると、原作のコピー(コオネ初登場のUJ9月号まで)をディーンから送ってもらったのが、この日。つまり、定光の予知能力だとか、回収機能が省かれたカスタマイズだとか、A・Jの存在を知って愕然となったのも、この日。いや、だからどーしたってワケじゃないんだけど、一応……。



●9月12日
 当日の朝に送ったシリーズ構成第3稿を前に、監督、長谷川社長、飯嶋PD、藤本PD、UJ岡田さん、篠原さん、菊池さんを交えてディーンで打ち合わせ。
 ここでの概略は、

#1 流刑体<堕輪>VS随行体
#2 定光VS流刑体<堕輪>、定光VS流刑体<堕輪ver.2>
#3 転校生・神代やよい、バイク型流刑体を手に入れる定光
#4 コメディ編(H系?)
#5 ホラー編(<駆崙>活躍編?)
#6 巨大宇宙船型流刑体降下
#7 四天王VS定光・ヴァルチャー
#8 定光VSヴァルチャー
#9 定光VS明信


 というモノ。前回の打ち合わせで、ゾンビ流刑体軍団がNGになったのを受けて、四天王が登場。これを受けて、監督は篠原さんに、頭脳型、格闘型、スピード型、重火器型の各流刑体をオーダー。また、この日、監督はB5×5枚のスケッチを持参。これは“古今東西大畑晃一(敬称略)お気に入りモンスター”のラフな似顔絵(絶対に実物を見ずに描いてるはずなんだけど似てる)がズラッと描かれたモノで、金星ガニ、ID4のエイリアンといった有名どころから、たぶん日本で5人くらいしか観たことない映画に登場するモンスターまで、総勢20体が描かれており、いや、改めて見ても圧巻。で、このスケッチを参考に打ち合わせは進行。
 #1の流刑体は“歯車でなく鎌を使う”ように監督から変更の指示。これで剥斬が再浮上。
 この後、監督と2人で、高田馬場のロイホに場所を移して、第3稿に書いた#1のプロットに関する打ち合わせ。いまメモを見ると“千恵子先生は実はテコンドー8段”だとか、そんなコト決めてどーする? 的な書き込みもあるあたりが泣ける。
 そんなワケで、実際にシナリオの執筆に取り掛かる。

 で、この後、吉田伸さん、西園悟さんへのオーダーが始まったり、小中千昭さんにも参加してもらっての、新宿滝沢別館から中華料理店に場所を移しての“シリーズ終盤会議”という一大イベントを経て、まぁ『破壊魔定光』のシナリオは書かれていったのでありマス。
 本来なら、最初の大畑メモから存在する、クライマックスの“定光VS明信”を、なぜやンなかったのか、とか、なぜラストの神代には彼氏がいるのか、とか、実際のシナリオ作業に入ってからの変遷も書いといた方が親切かな、とは思うけれども、ソレは内緒。

 代わりに、いま思い出したネタをひとつ書いとくんで、ソレで勘弁して。
 実は、アニメーション版『破壊魔定光』のサブタイトルには、監督の提案ですべて“男”の文字を入れる、というルールを、シナリオ作業もほぼ終わった(ちょっとウソ)12月上旬の“歌舞伎町焼肉屋会議”(メンバーは監督、藤本PD、西園さんと僕)で決めてあったのだけど、時既に遅し。既にWOWOWに申請してあったサブタイトルは変えられない、とかで、第3話までのサブタイトルは、構成案のモノが流用されててトホホ。
 で、この会議で上がったサブタイトル案をまとめつつ、アレコレ考えたのが以下のメモ(提出は12月12日)。実際のサブタイトルと比べてみると、【焼肉屋】編がベースになってるのを理解してもらえると思いマス。 

ver.01【焼肉屋】編
#01 男の道は喧嘩道
#02 行くぜ!男のスジ道
#03 暴走する男の魂
#04 燃える男子の本懐
#05 女は男の死神
#06 崩れゆく男の街
#07 男、命の拳を喰らえ!
#08 男、涙の相合傘
#09 屍越えた男の愛
#10 空に煌めく男の星座

ver.02【四文字】編
#01 喧嘩上等
#02 回収御免
#03 暴走無用
#04 下衆征伐
#05 雨中彷徨
#06 都市崩壊
#07 特服強硬
#08 墓地震撼
#09 乾坤一擲
#10 邂逅成就

ver.03【韻を踏んでみました】編
#01 男の道は喧嘩道
#02 男のスジは決めたスジ
#03 男の走りは風走り
#04 男の汗は勝利汗
#05 男の敵は魔性敵
#06 男の街は滅び街
#07 男の拳は激烈拳
#08 男の過去は迷い過去
#09 男の愛は死闘愛
#10 男の星は邂逅星

ver.04【頭の単語+男】編
#01 喧嘩は男の出合いを生んだ
#02 スジは男の迷いの果てに
#03 風は男の走りの魂
#04 汗は男の勝利のために
#05 女は男に涙を見せた
#06 桜は男の迷い花
#07 力は男に女がくれた #08 墓は男に事実を告げた
    (相合傘に男は揺れる)
#09 敵は男を愛する女
#10 星は男の笑顔を照らす
    (星は男の涙を隠す)

 ともあれ『破壊魔定光』に関わられた多くのスタッフの皆様と、応援してくださった皆様に多謝! もちろん、原作者の中平正彦先生には感謝の言葉もないくらい感謝しておりマス。4巻も買いました♪ ちゅーか、ホント、原作付きのアニメーションで、ここまで自由にやらせてもらえるとは思ってませんでした。

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