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2026.01.19

東京アニメーションカレッジ専門学校 伊藤監督ティーチインイベントオフィシャルレポート

1月17日(土)に東京アニメーションカレッジ専門学校にて
伊藤智彦監督登壇のティーチインイベントを実施いたしました。
以下オフィシャルレポートをぜひご覧ください。




キャラクター、世界観、ドラマ――伊藤智彦監督が貫く“アニメ制作3つの軸” 
「10年、20年の積み重ねが差になる」アニメ業界を志す学生へ熱きエール

アニメ・マンガ・声優などの業界で活躍するクリエイターや表現者を育成する、東京アニメーションカレッジ専門学校で開催された公開記念トークショー。
待ちわびる生徒と一般の当選者の前に伊藤監督が登場すると、盛大な拍手が。
伊藤がアニメ業界を目指すきっかけとなったのは「サラリーマン、いわゆるネクタイを付けて満員電車に乗る仕事をしたくなかったから、です(笑)船の大学に通っていて船乗りになろうと思っていたんです。一方で早稲田大学のアニメーション研究サークルにいってアニメを学んでいたこともありました。
それで就職するときにアニメをやろうと。マッドハウスに作品を持っていったんです。」と、アニメ業界に入るまでの異例の経歴を話す。
船乗りというかなり意外な経験をした伊藤だが「普通の社会生活を送ることも重要だったりするんですね。
コンビニの店員がどういう動きをするのかとか‥知っていると「自分分かります!」と言える。
大学時代は寮に住んでいたので、共同生活をせざるを得なかったので、それもアニメの仕事に活かされていると思います。」と話す。
マッドハウスで制作進行をしていた伊藤が監督や演出をするきっかけとなったのは、原作・浦沢直樹の「MONSTER」だったという。
「演出志望だったものですから、“監督やプロデューサーになりたいです”とずっと手を挙げ続けた。
監督の小島正幸さんに“コンテを書いてきたので見てください”というと、煩がられたこともありました(笑)」と、
仕事の合間を縫って自ら積極的に行動していたエピソードを話す。
「毎度手を挙げるのが重要と言われていたので、“こいつめんどくさいな”と思われるくらいがよいのではないか、と思います。」
とアニメーション業界を志す学生に自身の経験を活かしたアドバイスを伝えると、熱心に頷きメモを取る学生も。
そして、伊藤のデビュー作「世紀末オカルト学院」を経たことにより、
「(1つの作品に)なんでもかんでも詰めようと思っても全ては達成できないとわかりました。
3つぐらいしかできない。僕は自分の解釈として、「キャラクター」「世界観」「ドラマ」の3つだろうと思っています。」
と今もなお取り入れている、伊藤ならではのアニメ制作においての3つの軸を語った。

監督をする前にやっておけばよかったことを聞かれると「海外旅行」とコメント。
過去には1人でペルーへ行ったこともあるそうで、その時の苦労を思い出し、大変な時に自分がどうふるまうか、当時の感情を残しておくことが大事だと語る。
「ペルーにいったときにガイドのおじさんに湖に連れて行ってもらったんですよ。本当に人がいなくて、360度湖と僕と。
その経験は伊藤が監督を務めた「ソードアート・オンライン」にも活かされており、その時の想いを思い出しながら制作していました。」と、貴重な秘話も飛び出した。

学生時代にしておいた方が良かったことは「座学で得られることは業界に入るとあっという間に学べてしまうなと思いました。
継続的にやることを持っておいた方がよいと思います。デッサンを3枚書くとか、構図を10枚書くとか‥
10年、20年やるとその積み重ねが間違いなくかなり大きな差になってくる。」
現場の第一線を走る伊藤の言葉を、生徒たちは自分自身の将来に重ねるように、熱心に受け止めた。


伊藤監督が『クスノキの番人』で挑戦した“リアルな世界”の制作秘話
「僕を助けてください。待っています!」次世代を担う若者へ力強いメッセージを贈る


そんな伊藤が手掛けた最新作『クスノキの番人』では、東野圭吾原作初のアニメーション化に挑戦。
理不尽な解雇の末、逮捕された青年・玲斗。人生を諦めて生きてきた彼が、
見知らぬ伯母・千舟から命じられたのは、月郷神社に佇む「クスノキの番人」になること―
ここから、玲斗の運命が大きく動き出すこととなる。

伊藤にとって、一番“挑戦”だった部分を聞かれると
「原作を読まれている方はわかると思うんですけど、爆発もしないし、異世界もないし、派手な作品ではないんです。
割とリアルな世界の話をいかにアニメーションとして面白くまとめるか、というのは自分でもトライアルだと思って作っていました。」と、語る。

学生に注目してほしいポイントは「直井玲斗がアニメ主人公としては年がいってるんですよね。21歳というとみなさんより年上かもしれないです。
ニュースをみても、若者に辛い感じの社会になってきているなと思ったので‥そういう子が希望をもてるような、
頑張りが報われるような作品になればいいなと思っていました。
観て頂くと主人公や大場壮貴に感情移入してもらえるんじゃないかなと思います。」と、キャラクターの魅力を力説。
さらに本作には、キャラクターデザイン・山口つばさ(『ブルーピリオド』原作者)、板垣彰子(『かがみの孤城』)、
美術監督・滝口比呂志(『天気の子』)ら、錚々たる実力派クリエイターが集結している。
「(キャラクターデザインを)山口さんにお願いしたのもリアル一辺倒なキャラにしてしまうと固くみえそうだなと思ったので、
漫画っぽいキャラが同居しても良い世界観にしようと思っていました。」とこだわりを話す。
劇中では滝口が担当した美術も大きな見どころのひとつ、幻想的かつ美麗なクスノキがスクリーンいっぱいに広がる。
「色々試行錯誤されていたという経緯は知っていますけど、実際に熱海にいってご自身で観察して本番のカットを描かれているので、その成果が出ている。」と説明。
ぜひ劇中の圧倒的な描写にも注目してほしい。

そして、東京アニメーションカレッジ専門学校に通う生徒から募集された質問にも回答。
本作を手掛ける中でこだわったことを聞かれると
「3つの柱に通じることでもありますが、一つは柳澤千舟をかっこよく描く(キャラクター)、
ファンタジー性のあるヒューマンドラマ(ドラマ)、リアルな話だからこそアートな美術・カットをいれた(世界観)こと。
滝口さんの描くクスノキや水彩超の画などは個人作家さんにお願いして、なるべく入れられるようにと考えていました。」と話す。
そうしたこだわりからストーリーやキャラクター、ふとした瞬間に差し込まれる美しいカットの一つ一つに、監督が込めた“魂”が宿っている。
声優は、主人公・直井玲斗役に高橋文哉、柳澤千舟に天海祐希ら、豪華実力派キャストが務めており
「柳澤千舟さんは天海祐希さんというのは初期的に決めていましたけど、それ以外はオーディションをしました。
実は直井玲斗もオーディションをしたのですが、どうやってもかっこよくなってしまった。」
そこで伊藤が以前からいつか自分の作品に出てほしいと思っていた高橋をキャスティング。
見事にハマった直井玲斗となり、その声を絶賛したと当時を振り返る。

続けて制作で思い出深かったことを聞かれると、アフレコの制作秘話が飛び出した。
「柳澤千舟は一人称を「わたくし」というのでが、天海さんが一か所だけ、「わたし」と読まれたことありました。
この作品では自分が音響監督も担当していたので、「どうしようかな・・・」と思い悩んだがそのシーンには「わたくし」より「わたし」が馴染んだ。
それで、「わたし」をOKにしたんですね。何かしら、自分をガードしていた千舟というキャラクターがそれを無くす瞬間が“ここ”なのかなと思うと、それが正解なのかなと。
その時、現場に原作の東野圭吾先生がいらしていたのですが、僕の背後から「それがいいと思います」と仰ったんです。」と語った。
是非、映画を鑑賞する際に千舟が一度だけ言う「わたし」にも注目して欲しい。

更に、キャラクターの“感情”を表現するときに伊藤が一番大事にしていることを問われると
ここぞというときに“誇張”することだと回答。
「直井玲斗の目が金色になるところが1カットだけあるんです。これは細田(細田守監督)さんからの教えで、主人公が覚醒するときは目を金にする、と。
『サマーウォーズ』で健二くんが「よろしくお願いします!」という前に計算するシーンで、目が金色になるんですよね。」と伊藤ならではの演出術も明かされた。
ぜひ劇中での玲斗の描写にも注目してほしい。

最後に監督から「アニメ業界はたくさん仕事があります。皆さん早くこっち(制作側)にきてください。
そして僕を助けてください。待っています!」と力強いメッセージが贈られ、次世代を担う若者たちの背中を確かに押し出した。
制作の細部に至るまで伊藤監督のこだわりが貫かれた本作。
豪華キャスト、一流のクリエイターが手掛けた圧倒的な映像美と、キャラクターたちの魂が震える瞬間を、
ぜひ大スクリーンで目撃してください。