獣道一直線
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<オープニング誕生秘話>

──あのOPはカッコいいですよね。最初からインストルメンタルで行こうと考えておられたのでしょうか?

大畑 これ、ぶっちゃけた話しても大丈夫? 『破壊魔定光』の音楽的な世界観を考えた時にですね、最初は演歌で、それもド演歌で行こうと。昔の東映の、菅原文太の映画にあった、「男のぉぉぉぉ道はぁぁぁぁぁ~」みたいなね。そんなのをバックに登場すれば、笑えるし、受けるかな~と思って、プロデューサーに話してたんですよ。具体的には、アップテンポで、三味線なんかもベベンと入って、パンチのきいたヤツ。そしたら、「松村和子の『帰ってこいよ』みたいなの?」とか言うわけ。いや、そりゃ『帰ってこいよ』はいい歌だけど、戦闘シーンには使えんだろ(笑)。そこで、ちょっと考えて、昔『魔人ハンターミツルギ』ってあったじゃない。あと、『快傑ズバット』とか。あの辺の、三味線のバチの音がね、印象に残ってたんで、「いや、『ミツルギ』ですよ、『ズバット』ですよ」って言ってやったんですよ。そしたらプロデューサー、「知らない」って言うのね。

──普通、知りません(笑)。

大畑 サンプルを用意しようとしてたんだけど、たまたま手元になくて。なんとか都合しようとしてるうちに、先方も自分のイメージで動き始めて、デモテープを上げて来てくれたんですよ。それが、和製マカロニウェスタンて感じのものだった。方向性は合ってるけども、まだその時点では歌詞をつける予定でいたから、ちょっと弱い。もっともっと、戦闘の高揚感をかきたてるような、刺激的な曲にしたかったんで、1回NGを出させてもらった。ところが、どんどんスケジュールが差し迫ってきて、OPの歌詞を待っていたら間に合わなくなりそうだと。ってことで、コンテを先に描き始めることになってしまったんです。通常は、“スポッティング”っていうんですけど、主題歌の譜面をもらって、メロディラインや転調するタイミングに合わせてコンテを描いていくんですよ。ところが、今回は音楽は垂れ流し的にして、画を追いかけていくものにしようってことだったんで、読めないわけです。そこで、ひとつの手段として、カッコいいカットをスナップ的にコラージュしたものを作っておいて、曲が来た段階で最終的なタイミングをつけようと。で、とりあえずコンテを切り始めた。そしたら、プロデューサーの方が「コンテ見てから曲作ろうかな~」とか言い始めて。

──それじゃ本末転倒じゃないですか(笑)。

大畑 つまるところ、結果的にインストルメンタルで行くことになったのは、歌詞が間に合わないからっていうのが真相なんですよ(笑)。ただ僕も、インストを前提にしたバージョンのデモテープを聴いた時に「うん、悪くない」と思ったし、外国のTVドラマシリーズなんかは、ほとんどインストじゃない。だから、ひとつの考え方として充分いける、おもしろいんじゃないかと思った。この曲は、もちろんのメインテーマ曲にもなってますし、同じメロディーでもうちょっと軽いものとか、いくつかバリエーションも作ってます。音楽監督とも話して、この曲を『破壊魔定光』のテーマ曲として、劇中でもじゃんじゃんかけようぜってことで、意見も一致しました。実際、選曲面でもうまくいってると思うし、満足してますよ。

──映像的にも定光だけを追ってますよね。

大畑 大体、パターンのOPっていうのがあってね。主人公が元気よく走って来て、向こうから仲間たちも走って来て、で、敵の要塞かなんかがゴーンと降りて来て、とかね。なんか女の子の切ないカットが入って(笑)、最後はぐるっと180度くらいの回り込みの作画があってさ、ミサイルとか撃って、研究所だかの前に全員集合して決まり、みたいな。それが悪いってんじゃない。それも一種、王道だなとは思うよ。でも、外国のTVシリーズなんかはそういうのってあんまりないんですよ。『ナイトライダー』はナイト2000がテッテケテケテケ……って走ってるだけだし、『エアーウルフ』はチキチキチキ……ってヘリの性能を説明してるだけだし。『ポリスストーリー』なんかは、モノクロのカットを中ナシでつないでて、なかなか印象的だったね。『定光』のOPを、スチルカットの連続で行こうと思ったのは、その辺のイメージからなんですよ。だから、そんなに新しいことをやったってつもりはない。むしろ古い、昔はよくあった手法だと思ってます。OPで使うカットなんだけど、あれは最初、全部原作から抜いて来ようかとも思ったんですよ。ただ、それだと定光だけに絞るには限界があった。で、やっぱり作画になったんだけど、何枚かは原作にある画を使ってますよ。

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