獣道一直線
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<破壊魔大畑!>

──そもそもこの作品のアニメ化や、大畑さんが監督されることになったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

大畑 僕が聞いてる話では、ビジュアルワークスのプロデューサーが『破壊魔定光』の漫画を面白いと思ったのが始まりらしいですよ。これをアニメにしたら、いろんな展開ができるんじゃないか。モンスターや、ヒーローになる主人公のキャラクター商品も作ることができるだろうし、アニメーションそのものも、アクションものとして面白くできるだろう。ヒロインが、バルチャーというキャラクターに変身するのもイイってね。ああいうプロデューサーの人たちっていうのは、いつもアニメになりやすいような作品を探してるんですよ。で、今回は非常にツバをつけるのが早かったっていうか、僕が聞かされた時には、もう集英社の方に連絡して許可をもらってた。「これ、なんでやりたいんですか?」って聞いたんですよ。そしたら、「オレ、イケると思うんだよ」の一言。その時は、監督ってことじゃなかった。「こういう企画があってこれから作るんだけど、とりあえず個人的な相談相手になって欲しい」ということだったんですよ。それから、だんだん「メカニックとかアクションのアドバイスを」ってことになって、とうとう「監督をやれる余裕、ある?」ってな話が出ちゃった。どうも、人選が思うように進んでなかったみたいだね。

──それは大畑監督を最初から狙っていたのでは(笑)。

大畑 いや、もしこの作品の内容が、もう少しスタイリッシュでさ、オシャレ系の部分の匂いがあって、女の子がわんさか出てれば、僕に監督の話は絶対来なかったと思う。やっぱり特攻服を着て、バイクのヘルメットだけを被って、木刀で戦ってるってところに惹かれたんだろうね。演出というか、フィルムの肌触りみたいなものを、「もっと違うものにしたいんだ!」というプロデューサーの意向があったと思うんですよ。ただ、そのとき僕は、別口で抱えてた仕事があったんです。それが非常に忙しくて、かなりウエイトを取られてた。それに、どうやらスタジオディーンという会社で製作することになりそうだって話で。これがまた、たまたま僕の行ったことがない会社だったんですよ。やっぱり不安要素もあるわけで。だいいち、僕はそれまで、テレビシリーズの監督はやったことがなかった。正直、自分がその作品を監督することで、自分自身が楽しめるだろうか、モチベーションが出てくるんだろうかという疑問があったんですよね。ルーチンワークで仕事するっていうのも、決して間違っちゃいない。プロとしてはむしろそれを望んでるような会社もあるだろうとは思う。でも、僕がやるってことは、「ただじゃ済まないぜ」って部分があるわけですよ(笑)。普通のものを普通に作るだけじゃ面白くない。それが普通じゃないってのはわかってるんですよ。自分が異端だってのは認めてる。でも、どこか自分のフィールドに持っていきたいというのが、どうしてもある。で、まずそれがどこまで許されるのかということ。それと、僕以外のスタッフについてどんな人選がなされるのかということ。その二つがちょっと不安だったんですね。監督を僕がやるんだったら、シナリオライターや、流刑体のデザインを含めた世界設定のキャラクターデザイナーを誰にするか。「もし自分で“この人に”っていうのがあれば、連れて来てもらっても構いませんよ」って言ってもらえるのかって部分。さっきも言ったけど、その人選の面でプロデューサーはかなり四苦八苦していたみたいでね。もう、頭の中で「この漫画を普通に、原作通りに淡々と作ったら面白くないのかもしれない」ってなっちゃってたわけですよ。いわゆる悪い意味での「普通」のアニメ、ただのアニメにしたくないと。そのプロデューサーっていうのは、以前デビルマンのOVAをやってる方なんです。そのOVAは、原作漫画のキャラクターを独自にリメイクしたり、オリジナルの構成を入れたりして、商売的にも成功したし話題も作れた。そういうマイナーチェンジが必要なんだというのが、プロデューサーの頭の中のどっかにあったんだろうと思う。僕のところに協力を求めてきたときに、僕の「色」を入れることを、ある程度予想してたはずです。

──それで、メインライターには……

大畑 うん。近くに住んでるからという理由で、赤星君。いや、それは半分冗談ですけど。半分本当ですけどね(笑)。もちろん、初めての人と上手くいくかどうかって不安は、いつもある。でも、一緒に酒を呑んだりして、それなりのフィーリングは掴んでたしね。最悪、大ゲンカでもして、駄目になっちゃったとしても、「やるんじゃなかったぜ」と思われてしまうようなことはないだろうと踏んだんです。年代的に近いこともあるんですけど、彼自身の持っている、アニメとか特撮ドラマに対する見方とか考え方が、僕は好感が持てたんですよね。そういうのがありつつも、仕事は仕事としてマジンガーの本とかデビルマンの本とか作ったりしてるし、アニメーションのシナリオも書いてる。ひとつのところに集中して戻ってこなくなっちゃうような、アンバランスな人ではないんだと確信できた。この人はバランスは取れてるから、非常に深いところにも行けるかもしれないし、同時に離れたところからもモノを見ることができるんじゃないか、と。やっぱりそういう人じゃないとね。一緒に盛り上がって、ガァーッと行っちゃって、誰もついて来れなかったらマズイわけですよ。僕がそういう性格なんですから。僕がガァーッ行くと誰もついて来ない。「オレを追い抜いてみろ!」って後ろ振り向いても、誰もいなかったってことになってしまう(笑)。だから今回は、自分にブレーキをかける人間をまわりに置こうと。そうしないと、たぶんオレの暴走がこの作品を破壊するだろうと、こう思ったわけ。

──監督自身が破壊魔だったんですね(笑)。

大畑 今まで人間関係で苦い経験もありますし、人の原作を預かるというのは他人の子を預かるみたいなとこがあって、やっぱり気は使うんですよね。オリジナルだったら、そのまま、なんか台風みたいになっちゃうところも許されるんですけど。

──キャラクターデザイナーの菊池晃さんに関しては?

大畑 彼とも一緒に仕事したことはほとんどない。だけど、何年か前からの知り合いで、もちろん彼の絵は見てた。彼の絵というのは、ある種ドロ臭いというかビンボー臭いというか、僕なんか好きなんですけど、タッチがいわゆるガキ大将時代の漫画のノリなんですよ。僕は『定光』の漫画の線、お話の色っていうのは「線が細くないな、これは太い世界なんだな」と思った。で、彼ならやれるんじゃないかと声をかけたんですよね。やっぱり実力もあるし、キャリアを積んでるから仕事度胸みたいなものもある。黙々とこなしてくれて、僕は満足してますね。

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