作品とともに歩いてきた20年 作品とともに歩いてきた20年
高橋 2004年にアニプレックスに新卒入社しました。ソニーミュージックの一括採用だったんですが、志望をアニメ事業にしていたのでアニプレックスに入社することになりました。それからグループ内の異動なく、今年で22年目になります。制作と宣伝で半分ずつキャリアを重ねて、現在は制作・宣伝の両組織があるプロデュースグループという部署の1つ(第2PG)のマネジメントをしています。
小野木 2005年に新卒入社し、ソニー・ミュージックコミュニケーションズ(現・ソニー・ミュージックソリューションズ)でCDジャケットの進行管理をやっていました。3年目からソニー・ミュージックディストリビューションでレコードショップへの営業をしていました。5年目にアニプレックスの営業部が新設されるということで、アニプレックスの販売推進に異動しまして、そこからずっとアニプレックスですね。2015年にゲームの部署に異動し、今は私も、3つあるプロデュースグループの1つ(第3PG)のマネジメントをしています。
高橋 私が宣伝の部署にいた頃に、小野木さんは先程言っていた販売推進というDVDやCDの営業を統括する部署にいて、いくつも同じタイトルの作品担当をしていましたよね。
小野木 『《物語》シリーズ』『Fate/Zero』『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』といった作品での連携の他にも、「ViewCast」という部署横断型のプロジェクトでもご一緒していましたね。
高橋 私たちが同じ作品を担当していた2010年代前半はビデオパッケージがビジネスとして好調かつ会社の利益の多くを占めていたこともあって、宣伝と販推が連携していろいろな施策を展開することが業務の中心の一つでした。小売店の店頭での配布イベントや、店内での様々なキャンペーンなど色々やりましたね。私から見た小野木さんは、とにかく実行力と作品の読解力が高く、何か新しいことをするときも前向きなコミュニケーションをしてくださる。とても頼りになる印象がありました。
小野木 高橋さんは牽引力があって。向かっていくところの着地点をしっかりと見据えるセンスがすごいなといつも思っていました。高橋さんの宣伝の方向性に合わせて、店頭で展開していくという形だったので、宣伝の目指すところが明確なことにいつもすごさを感じていました。
高橋 当時は製作プロデューサーやクリエイターが企画を作り0を1にしたものを、宣伝や販推として私や小野木さんが1を5や10にするという仕事をしていた印象です。リアルな店舗でお客さんに届く展開をして、ちゃんと数字に繋げていくというコミュニケーションを現場でやっていたんですよね。あのころの業務は、今の私たちのそれぞれの仕事につながっていると感じます。

- ■ 高橋 祐馬 / 第2プロデュースグループ 本部長
- 2004年アニプレックス入社。『化物語』『アイドルマスター』等の宣伝を担当後、製作プロデューサーへ。『はたらく細胞』『鬼滅の刃』『Vivy』などを担当し、マーケティング的アプローチを活かしたプロデュースで、様々な作品・プロジェクトを担っている。
小野木 私はスマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』(以下、FGO)が立ち上がるときに、当時のプロデューサーだった岩上(敦宏・現アニプレックス代表取締役執行役員社長)さんに声をかけていただいて、販売推進と兼務でゲームの製作に参加しました。思えば『FGO』の最初の発表のときも高橋さんとご一緒していたんですよね。
高橋 そうでしたね。2014年に実施した「Fate Project最新情報発表会」(会場:品川インターシティホール)で私が声優の中田譲治さんと一緒に司会をして、そこで『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』と劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel] 』、そして『FGO』の発表を行いました。
小野木 私は販売推進の一員として会場にいました。そのときは『FGO』に関わるとは思ってもいませんでした。実際にスマートフォンゲームに関わってみると、お客さんとコミュニケーションを取るという面では根本的に販売推進の仕事と違いはない。けれど、やはりライブサービスなのでリアルタイム性がすごく強くなりましたね。
高橋 私は入社当初は制作に配属されたのですが、当時はその部署でのパフォーマンスが低く、2年弱で宣伝部に異動になりました。その後、宣伝を11年やってきて社会人の土台となるような代えがたい経験を積むことができた。その中で御縁があり、声優の鈴村健一さんが総合プロデューサーを務める即興舞台劇「AD-LIVE(アドリブ)」の制作プロデューサーとして携わることになって、だんだん作品の根幹に関わりたいという気持ちが芽生えていきました。その後、2017年に劇場版『Fate/stay night [Heaven's Feel] 』を製作するにあたり、『空の境界』からずっとお世話になっていたクリエイター・須藤友徳さんの監督作品に宣伝以上に関わりたいという思いで、岩上(当時はプロデューサー)さんに相談し、正式に制作部に異動、アソシエイトプロデューサーという形で関わることになったんです。
小野木 自分がゲームの部署に異動したころから考えると、いまでは当時の3倍くらいの規模になりました。ゲームも社内の他部署と一緒に仕掛けることが増えて、ライセンスチームの力を借りて企業タイアップをしたり、ソニーミュージックグループ内のソニー・ミュージックソリューションズと一緒にイベントを行うことも増えました。さらに『FGO』を開発しているディライトワークスのゲーム事業をアニプレックスが継承して、新会社ラセングルをアニプレックスグループとして設立しました。自分たちの活動の範囲が広がっていった10年間だったと思います。
高橋 そうですね。自分が入社した2004年ころはアニプレックスの知名度はほとんどなくて、社外の人からは「ソニーさん」と呼ばれ、ソニーミュージックグループの同期からは「アニメの会社なんてあるんだ」と言われ、業界内でもグループ内でも本流からは遠いところにいるような扱われ方をされていました。そこから20年かけて、1つ1つの素晴らしい作品との出会いが会社にあり、その先に、小野木さんが担当する『FGO』や私が担当する『鬼滅の刃』といった、今まで以上に多くの方に楽しんで頂ける作品に巡り会えた。会社の成長や変化を感じ続けています。今は、業界関係者の方からアニプレックスを頼りにしていただくことも増えましたし、個人的には親戚の叔父さんから会社や仕事を認知してもらえたのも大きな変化です(笑)。

- ■ 小野木 航 / 第3プロデュースグループ 本部長
- 2005年 現:ソニー・ミュージックソリューションズに新卒入社。2009年にアニプレックスに異動し、2015年からゲームの企画制作担当となる。現在は「FGO」のビジネス面でのプロデュース業務を担当しながら、所属部門のみならずグループ会社であるラセングルの取締役としてアニプレックスのゲーム事業全般を取り纏めている。
次の10年へ
ふたりが考える、これからのビジョン
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高橋 私と小野木さんは今それぞれの部署のマネジメントをしています。どちらの部署にも制作部と宣伝部があって、各プロジェクトでクリエイターやスタジオ皆様と作品を制作し、自分たちで宣伝をしています。どんな作品を作り、お客さんにどう伝えて、世界中にどう届けるのか。もちろんビジネスですので利益を生み出すことに向けて社内の各事業部と連携していくのも重要な仕事です。作り、伝え、届け、稼ぐ。その為に何よりも大事なのは、見ていただいた方に楽しんでもらい感動していただける「代表作」になる作品をプロデュースすること。それが自分の目標です。
小野木 現在のアニプレックスのビジネスは、アニメ、ゲーム他多岐にわたり、それぞれのビジネスでマネタイズの手段があります。それら手段を活用するためにも、まず第一にヒットする企画を立てていかなければなりません。ヒットを作るには、発想力と実行力をもって企画を立てるプロデューサーがいて、その企画を正しく評価できる体制がある必要があると思います。特にゲームはアニプレックス全体においてはまだ歴史の浅いビジネスになりますので、まだまだここから成長していかなければならないと思っています。
高橋 小野木さんの話に共通するのですが、やはりアニプレックスの本懐は「ヒットする作品=新しい代表作を生み出すこと」だと思います。プロデュースの和訳が「作る」「生み出す」なので、部署名(プロデュースグループ)も目標と合致しています。作品こそが心臓です。心臓から良い血が循環することで人が元気に生きるように、良い作品が鼓動すると、会社も業界も元気になる。この循環をもっと活発にしないといけないと思っています。ビジネススキームや利益性も大事なんですが、中心は”面白い”です。面白い作品を作る素晴らしいクリエイターやスタジオの皆様と共に、未来を変える代表作をプロデュースしていきたいですね。
小野木 最近は入社面接でも『Fate/Grand Order』が好きで……等、我々の世代が仕事で携わってきた作品を体験して興味をもって来てくれている方もいらっしゃるので、良い循環があるなと感じています。
23年目のアニプレックス
二人が来て欲しい人材
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高橋 世の中にはエンタメはたくさんあり、世界中のクリエイターやプロデューサーがコンテンツを毎日生み出している。だから、僕らが作らなくても、漫画も、アニメも、ゲームも、バラエティも、音楽もたくさんあり、毎日楽しい。お客さんの可処分時間なんてほぼない状態だと思うんです。その前提で、それでも尚、何かを作りたい、届けたいと思うならば、「楽しませたいという思い」を他の誰よりも強く、抜きん出て持っていて欲しい。知識や経験はあとからいくらでも身につけられますが、思いは身につけるものではなく中から湧き上がるしかないものです。自分じゃない誰かを楽しませたいという強い情熱や野心を持っている人にアニプレックスに来てほしいと思います。
小野木 「アニメとかゲームを詳しくないとダメですか?」と聞かれることがあります。当然、アニメやゲームをたくさん知っていると、引き出しが多くなりますから、仕事をしていく上では大事重要なことだと思います。ただ、我々の仕事は実際に絵を描いたり、プログラミングをすることではなく、あくまで人と人の関係で仕事を進めていくことになります。お客さんに対しても、クリエイターさんに対しても、「相手がどういうことをしたら喜んでくれるか」「どうしたら嬉しいか」、逆に「どういうことをしてほしくないか」といったことを常に考えていくことも大切です。知識や経験だけでなく、人の価値観や想いに寄り添ったコミュニケーションを大事にできるというのは重要なポイントだと思っています。
文・取材:志田英邦/撮影:干川 修
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