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劇場に合わせた展開を考えることが 腕の見せどころ
劇場に合わせた展開を考えることが腕の見せどころ
映画営業部はそれぞれが劇場の担当と作品の担当を持って、アニプレックス配給の映画作品を映画館で上映するセッティングをし、興行収入を売り上げるまで担う部署です。
基本的にチームで一丸となってさまざまな活動を進めていますが、劇場に飾られる大型パネルであったり、前売券などは弊部で制作進行をしていきます。また、映画館で行う舞台挨拶や、お客様から頂いた映画鑑賞料金を弊社と映画館との間で精算するといった役割も担います。
映画の本編はテレビとは違う特殊なデータ形態で劇場に納品するのですが、その制作進行や全国の劇場にちゃんと本編素材が届いたか、上映できるかどうかのチェックなども私たちが担当しています。
シンプルな工程ではありますが、地方の劇場に届けるときに天候に影響されて予定通りに届かないこともあったりします。私もとある劇場で本編素材が上手く上映できなくて、直接その劇場へ代品を手持ちで届けたことがあります。映画の制作中から公開が終わるまで、作品と深くかかわっていく部署です。
私もいくつか劇場ごとの担当を持っているのですが、劇場それぞれに客層も違えば、得意な宣伝施策も違います。大規模なシネマコンプレックスもあれば、数人の精鋭スタッフで運営しているようなミニシアター系の劇場もあって、それぞれと取引をしているので、しっかりとその劇場の特性に合わせた施策を考えることが大事。それぞれの劇場に合わせた展開をすることが担当の腕の見せ所になります。
私の担当劇場のひとつにはアニメのファンが多く集まる劇場があり、コラボドリンクや限定のグッズなど熱いファンに向けた施策を展開してくださっていて、しっかりと作品に協力してくださる劇場だなと思っています。
タイトル担当では最近の作品では『劇場版シティーハンター 天使の涙』、これからの公開の作品では2026年1月30日公開予定の『クスノキの番人』を担当しています。
関わり方は作品によって違うのですが、作品担当に任命されたら、基本的には最初に打ち出す(制作発表)のときからジョインすることが多いです。作品によっては三部作や、制作期間が長い作品もあるので、2~3年単位で作品と関わることもあると思います。
私がこれまで担当した作品で印象に残っているのは『犬王』(2022年公開)という、湯浅政明監督の劇場オリジナル作品です。TVアニメがすでに先行している作品の映画化はファンの方がすでにいらっしゃるものになるので、ファンの傾向などもわかるのですが、映像化が初の作品はお客さんへのアプローチ方法から考えていかないといけません。
作品を拝見したときに主人公2人の関係性が魅力的だと思ったので、監督のファンだけにはとどまらず、女性ファンなどにもアプローチをしていこうと、弊部としても新しい試みとして、生コメンタリー上映や歌詞字幕付き応援上映を根強く実施するなど、新しい切り口の映画鑑賞方法を提供しました。様々な試みができ、とても良い経験になりました。
映画産業はここから次の一歩へ
映画産業はここから次の一歩へ
アニプレックスの映画配給は最初、すごく小さな規模から始まったんです。『空の境界』(2007年公開)のときにほんのわずかな劇場で公開するところから始まったのですが、最初は劇場の自社配給はどうやったらいいのかを考えるところからスタートしたそうです。
そのときに中心となっていたのが、今の私の直属の上長です。私たちはその上長が作り出したノウハウを受け継いでいる、ということになります。
今の部署の社員は7人。常に5~10本の作品を扱っています。その中には公開日がまだ決まっていないものも、未発表のタイトルもあります。予告編の準備であったり、ポスターの仕込みをしたり、制作部・宣伝部といっしょに調整しながら進めているところです。アニメ作品はとても多くの方が関わっているので、さまざまな部署や担当者と調整をして、映画を送り出していくことが私たちの仕事になります。
私が入社した年はコロナ禍の真っ最中で、劇場がまったく営業できない時期でした。その後も客席を50%しか使えないという時期が続いて…。ようやくここに来て、劇場がコロナ禍以前に戻ってきたという感じがあるんです。ここから5年前の120%、130%に拡大していきたいと考えています。
アニプレックスの映画作品は、TVシリーズをきっかけにファンが支持し続けてくれている作品が多いです。単独映画をきっかけとして、老若男女に受け入れられている作品というのはまだまだ少ないので、映画館の上映館数を増やすだけでなく、もっと多くの人に見てもらえるような施策をしていきたいと思っています。
映画の未来を、
ひとつずつ灯していく。
いろいろな知識や経歴を 発揮できる場所
いろいろな知識や経歴を発揮できる場所
うちの部署をご覧になった方には、家族みたいだとよく言われます。部門長が男性で、直属の上長が女性で、それ以下の部下はみんな子どもみたいな感じで(笑)。みんなでいっしょに社食でご飯を食べたり、いっしょに行動をしていることも多いです。作品に取り組むときも一致団結して挑むことが多いですね。
アニプレックスには、いろいろな業界を経験した方が集まっています。エンタメとは全く違う勉強をしてきても、そこで培った知識が役に立つときがくる。
私自身も、学生の時は農学部の水産学科にいて。ハナミノカサゴという毒を持っている魚を研究していました。その一方でアニメがずっと好きで、関西に在住していたときも声優さんのライブのときには深夜バスに乗って東京に行くという学生生活をおくっていました。
学生のころに、自分の好きなものに打ち込んだ経験は今の仕事にも役立っているのかもしれません。いろいろなことに興味をもっている方がアニプレックスに向いているんじゃないかと思います。
文・取材:志田英邦/撮影:干川 修
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